家族の誰かが家からいなくなるということ。
理由はさまざま。
妻が子どもを連れて家を出てしまった。
夫が恋人のところにいってしまった。
その日から残された者は出て行った家族の幻影に悩まされることになる。
彼が,彼女が,子どもが,残していったいろいろなものに。
一切合切持って出てしまうこともあるけれど,結局家自体に家族の思い出が染みついてしまっている。
これは,つらい。
一方的な場合はもちろん,お互い納得の上でのことでも,やはり誰かが消えた現実を受け入れるのはとても辛いことだ。
たくさんの思い出に囲まれた状態で,いなくなった家族についての思いを整理するというのはそう簡単なことではない。
そんな中でも日々仕事をし,子育てをし,生活をしていかねばならない。
どんなに悲しく,どんなに辛くても,やるべきことは待っていてはくれず,抜け殻のようになっても,それらをこなしていかねばならない。
生きる気力すら湧いてこない中で,力を振り絞ってひとつひとつのことをやっていかねばならない。
いっそ自分も環境を変えてしまうほうがいいのだが,それもかなり精神力と体力と経済力のいる作業だ。誰か助けてくれない限り到底ひとりでは無理だ。
そんな状態の中で,少しでも前に進まなければならないという思いで,私のところに来られる方は少なくない。
ずっと側にいてあげることはできないし,ご自身でなんとかしなければならないことのほうが圧倒的に多いのだけれど,
ほんのちょっとでも私が分け合えることがあれば,と思っている。